[インドネシア/マレーシア等] 越境により広範な地域に被害をもたらすヘイズ(煙害)

2019年12月7日に投稿された課題

投稿者:SHIP Secretariat

所属:SHIP

場所:地域:アジア・太洋州諸国 国: 市町村:インドネシア、マレーシア、シンガポール等

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課題・ニーズ

東南アジア地域、特にインドネシアが抱える環境破壊問題の一つ、ヘイズ(煙害)は、年々深刻さを増しているが、特に今年8月から発生したとみられる森林・泥炭火災は、4年前に起きた当時史上最悪といわれた大規模森林火災に匹敵するレベルだといわれている。

9月19日発表のロイター通信の記事では、今回の泥炭火災に関する懸念すべき事実情報を7つ挙げている。

1: 泥炭地を野焼きすることで地中のバイオマス成分が燃やされ、泥に含まれていた炭素が大気中に放出され煙が発生する。この有機炭素の中にPM2.5として知られる微粒子が含まれており、人体や気候変動に深刻な悪影響を与える可能性がある。

2: 泥炭は腐敗した植物の堆積したもの。この泥炭が燃えるとその泥の深さと密度のため消火が非常に困難であり、一度燃え始めると数ヶ月、長ければ数年もの間、燃え続けることがある。また泥炭は乾燥していると特に可燃性が高まる。森林開拓によって地下水を失い、干上がった状態の泥に燃え移れば、そのまま予期せぬエリアにまで火災が広がっていく。そして炎は泥炭を焼き尽くすと同時に、そこにあるこれから成長するはずの木々の根や種子までも燃やし尽くす。

3: 2015年9月に起こった、当時史上最悪とされたインドネシアのヘイズ被害。そのときの危機と比較しても、今回の方が、有機炭素による汚染がより広範囲に広がっていることが分かった。データによれば2015年のケースでは煙霧はまばらなところもあったが、今回の場合、より濃度が高い広範な煙霧が発生している。

4: インドネシア環境・林業省の調査データによると、ボルネオ島カリマンタン州の州都パランカラヤの大気汚染指数は500で「危険」レベルのまま。また、その他の地域、ジャンビ州やリアウ州などでも指数100またはそれ以上の数値となり「不健康」レベルとなっている。

5: インドネシア災害管理委員会のSNS発表によると、インドネシア政府はスマトラやボルネオ等の6つの州で非常事態宣言を発令。29,000人以上の軍、警察、関係省庁職員を動員して火災地域の大規模消火活動を進めている。

6: 隣国マレーシアとシンガポールにも悪影響を及ぼしており、二国で大気汚染指数が「不健康」レベルとされた。また、マレーシア政府は影響がみられる地域にある数千もの学校を閉鎖。この状況を打開するため非常手段として人工降雨を展開。また国民にマスクを配布。

7: インドネシア保健省の発表によると、パランカラヤでは11,758人、リアウでは15,346人、ジャンビでは15,047人もの人々に急性呼吸器感染症の症状が見られているという。

 

このインドネシアで発生した泥炭火災に関しては、WWFジャパンも「緊急報告:インドネシアで泥炭・森林火災が多発」として、問題の大きさと緊急性について発表している。その報告の中の「日本からできること」では、起こってしまった泥炭火災の消火活動に関する支援の必要性と、このような火災や煙害、森林破壊を未然に防ぐための企業の責任について、こう呼びかけている。

“海の向こうで起きている森林火災への対応には、まず消火活動への支援が急務です。しかし、この問題を解決するためには、こうした地域で生産されたパーム油や紙を輸入し、購入している日本の企業や消費者の理解と協力が欠かせません”

 

負の連鎖に歯止めをかけ、さらなる森林破壊、大気汚染を起こさないための策が、緊急で求められている。

 

課題に関する考察・その他

出典

https://jp.reuters.com/article/us-southeastasia-haze-factbox/fast-facts-about-the-smoky-haze-smothering-southeast-asia-idUSKBN1W40YK

関連サイト

参考資料