[インド/アフリカ等] 衛生作業員の過酷な労働環境と認められない尊厳

2019年12月15日に投稿された課題

投稿者:SHIP Secretariat

所属:SHIP

場所:地域: 国: 市町村:インド、アフリカ等の国々

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課題・ニーズ

2019年11月、国際労働機関(ILO)、ウォーターエイド、世界銀行、世界保健機関(WHO)が共同で発表した報告書によれば、開発途上国で数百万人いるといわれる「衛生作業員(人間の排泄物処理に従事する職人)」のほとんどが、機材も安全対策も法的な権利もないという非人間的な労働環境での労働を余儀なくされているという。調査発表をおこなった4つの団体は、非人道的な労働環境に対する注意を喚起し、その改善を強く促そうとしている。

人の排泄物処理のシステムは、トイレから始まり、排泄物が処分または再利用されるまでが一連の流れであるが、このシステムの様々な段階や過程において、衛生作業員達が働いている。彼らの仕事には、トイレ掃除、排泄物を溜めたタンクや水槽の汲み取り、下水道やマンホールの清掃、ポンプ場や処理プラントの操作などがあるが、こうした仕事に従事する彼らの多くが人の排泄物に直接触れ、機材や安全対策もない条件下で長時間作業をし、さまざまなガスやウィルス菌に暴露されるリスクと隣り合わせでこの仕事に従事している。

まず、命と健康にかかわる問題の一つに、有毒ガスがある。浄化槽や下水道に発生するアンモニア、一酸化炭素、二酸化硫黄などの有毒ガスは作業員の意識を失わせたり、時に死に至らしめる。正確な統計データはないものの、インドだけでも5日おきに約3人の衛生作業員が死ぬケースがあると推定されている。

一方、人権に関する課題も多い。こうした衛生作業員は多くの場合、階級社会がまだ残る社会においては下層とされる人々が就く職であり、社会から疎外され差別を受ける人々である。そんな彼らの仕事は、賃金相場も不確定で、法的権利や社会保障などもない。経済的な安定もなく、保障もないことが負の連鎖となり、かれらは貧困からさらに脱却できないのだ。

報告書では、衛生作業員の過酷な状況がわかる例がいくつか紹介されている。

インド、バンガロールの衛生作業員、Somappa。排泄物タンクの掃除は素手と裸足。傷のある足を感染症から守るためにビニール袋を巻き付けている。

アフリカ、ブルキナ・ファソのWendgoundiは、自分の職には何の尊厳もないと嘆く。「何か記録が残るわけでもない。何の実績や足跡も残らない。自分は何者でもなく、死んでもただ死ぬだけ。自分の子にわたしと同じ仕事はやらせたくない」

イギリスのNGO、ウォーターエイドの最高経営責任者(CEO)ティム・ウェインライト氏は、「誰かがトイレにたまった廃棄物を適切に処理しなければ、その衛生環境は悪化し、利用者の衛生リスクも高まる。つまり衛生作業員は、あらゆる社会で最も重要な役割の一つを担っているのだ。しかし彼らは健康と命を危険にさらす環境で働かざるを得ず、感謝もされないどころか、汚名と疎外感を背負わされている。これは決して容認されるべきことではない」と強調している。

WHOも11月15日のHP発表にて「2030年までに持続可能な開発目標6を達成するためには多くの衛生作業員等が、安全で、健康で、尊厳ある労働条件の下で働くべきである。社会全体の健康を守る衛生システムをきちんと維持する人々のため、安全で威厳のある労働環境を確保すべき」としている。

世界中の発展途上国の衛生作業員達の権利と福祉の向上に資するソリューションが求められている。

課題に関する考察・その他

出典

https://www.wateraid.org/jp/news/WTD-2019

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参考資料