[途上国] 経済発展で顕著になる都市の廃棄物処理システム不在による課題

The World bank (世界銀行)が2019年9月に発表した情報によると、世界中、特に経済成長目覚ましい途上国において、廃棄物の発生率が上がっているという。

発表によると「 2016年時点では世界の大都市で約20億1,000万tの固体廃棄物が発生。つまり都市の人口一人当たり一日0.74kgという量のゴミが出たという計算である。急速な人口増加と都市化がすすむことで、このままいけば2050年にはゴミの年間廃棄量は34億4,000t、つまり2016年の70%増というレベルにまで達することが予測されている」とある。

また、「先進国の国民と比べて、途上国の特に都市部の貧困層が、ずさんな方法で管理、処理されている廃棄物によって、深刻な影響を受けているのである」としている。

低所得国では、廃棄物の90%以上が規制のないゴミ捨て場で処分される、または屋外で人の手によって燃やされる。こうした、人々の非公式なゴミ処理習慣が、人々の健康、安全な生活、そして環境への甚大な影響をもたらしているのだ。適切に処理されない廃棄物は、伝染病ウィルスや大腸菌などの繁殖を促し、メタンガスが発生することで環境汚染の根源ともなる。また、都市部の治安を乱すような心理的に負の影響を与えることがある。

また、世界銀行は発表の中で「廃棄物の適切なマネジメントがサステナブルな都市の構築には不可欠」と述べ、この課題に取り組むことに対するいくつかの視点を紹介している。例えば以下のような項目である。

インフラ整備:廃棄物の分別処理施設の建設、設備のリニューアル、不法投棄場の閉鎖、ごみ埋立て地の造設及び改修、輸送の仕組み強化のための投資

財政面のアドバイス:廃棄物処理の予算獲得に資する税や徴収方法の設計、コスト削減のための財政計画支援。

市民参画の仕組み作り:市民の行動変化や積極的関与が、廃棄物処理の仕組みを円滑にするカギである。市民の関与を促すための、ごみ削減、分別、リサイクル意識の啓蒙やインセンティブの仕組みづくりの支援

社会的包摂:途上国での廃棄物回収は、その15%〜20%の収集、選別、リサイクル作業をいわゆるインフォーマルな労働者層に依存している。こうした労働者等の人権保護や労働条件の向上、トレーニングの提供などを進めることにより包摂的社会構築のために取り組んでいる。

気候変動と環境整備:正しい廃棄物処理は環境の課題解決を促進する。また食品ロスの削減、有機廃棄物の再活用、バイオガス、埋立地ガスなどの有害ガスを回収し空気を清浄化する技術は、温室効果ガスの緩和を促進する。また用水路への不法廃棄を減らすことで都市のインフラを正常に機能させ、冠水や洪水などの災害から市民未を守っている。

健康と安全:廃棄物管理の仕組みを整える取り組みは、野焼きを減らし、害虫やウィルスの拡散を緩和。また治安の維持や公衆衛生にも貢献し、市民のQOLを向上させる。

今後ますます経済成長する途上国において、廃棄物処理の問題は重大かつ解決必須。そして、この難しい課題を解決することが、周辺の様々な課題を解決することにもつながる、まさしくレバレッジポイントであるといえよう。

増え続ける廃棄物を効率的かつサステナブルな方法で管理する仕組みに関するアイデアが必要とされている。

[コンゴ民主共和国] 世界最悪のはしか流行によって奪われる子ども達の命

2020 年1月のCNN報道によれば、アフリカのコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)における麻疹(はしか)の流行が近年における最悪レベルにまで拡大している。世界保健機関(WHO)も、1月9日までに同国におけるはしかによる死亡者が6000人を超えたことを明らかにしている。更にWHOの報告によれば、2019年以降、はしかの疑いのある症例は31万件も報告されており、その患者の1/4は、5歳未満の子ども達であるという。

はしかは感染力が強く、患者のせきやくしゃみなどの空気感染により広がる。また、体力の弱い子どもが感染することが多く、重症化すれば、脳炎や肺炎などの致死率の高い合併症を発症することもある。

この感染症の予防に最も有効なのはワクチン接種。しかしコンゴでは、昨年のエボラ出血熱が過去2番目に最悪なレベルで流行した際判明したように、人々の、国の医療システムへの不信感が根強い。また、一部の地域では相変わらず武装集団による抗争も勃発しており、それらが障害となり、人々の予防接種率は低いままなのだ。

国際連合児童基金(UNICEF)などの団体の発表によると、同団体は支援団体と連携して医薬品などの配布を続けているものの、こうした内情によって思うように対策が進んでいないといい、「包括的な長期計画が必要である」と強調。また、エボラ熱と比べた時、はしかの方が死者数が多いにもかかわらず、エボラ熱ほど注目が集まっていないと専門家は指摘している。

はしかの更なる拡大を抑える、または、感染後、すぐに治療を受けられるような医療システムの充実が、急務である。