[カナダ] 北極圏の空気中に舞うマイクロプラスチック

北極圏の環境測定をする調査団によると、人手が加えられていない最後の環境とされる北極圏ですら空気中にマイクロプラスチックが舞っている可能性があるという。ドイツとスイスの調査チームが行ったこの研究は、学術誌「サイエンス・アドバンシス」で発表された。

調査チームはノルウェー領スヴァールバル諸島で、デザートスプーンとフラスコというありふれた手法で北極圏の雪を集めた。その後、ドイツのアルフレート・ウェゲナー研究所で混入物を数えたところ、予想以上の数を見つけた。

混入物は非常に小さかったため、出所を特定することは難しいという。混入物の大半は植物繊維や動物の毛といった自然由来のものだったが、プラスチックやゴム、ニス、塗料などの欠片や、合成繊維とみられるものも見つかった。研究を主導したメラニー・バーグマン博士はBBCニュースの取材で、「ある程度の汚染は予想していたが、これほどのマイクロプラスチックが見つかったのはショックだった。このプラスチック片の大半が、雪と共に空中からやってきたことは明らかだ」と語った。

研究では、マイクロプラスチックが風で巻き上げられ、大気中を長距離飛んで北極圏まで運ばれたとみているが、その仕組みの全容はわかっていない。その後、空気中の欠片は降雨や降雪によって大気から「洗い流される」という。

4月にイギリスとフランスの共同チームが発表した研究によると、ピレネー山脈のフランス側でもマイクロプラスチックが雪と一緒に降っていることが明らかになっている。これまでにも中国広東省東莞市やイランのテヘラン、パリなどで、雨や雪からプラスチックが発見されている。いずれも、プラスチックがどこからやってきたかは不透明なままだ。

北極圏という最果ての地の雪にすらマイクロプラスチック片が混入している事実は、地球にとって危機的状況をあらわしている。研究チームの一人の博士は、「こんなに多くのプラスチック包装が必要なのでしょうか。塗料にポリマーを入れる必要があるのでしょうか。車のタイヤを別の素材、形にできないのか。こういった重要な問題を問う必要がある」と話している。

[インド] ”災害級”と言われる大都市の危険な大気汚染

2019年11月、BBCの報道によれば、インド首都デリーの大気汚染がさらに悪化し地元政府の首相が「大気汚染が耐えられない水準まで達した」として、市民に外出自粛を要請し、通行車両のナンバーを制限するといった対策が緊急で講じられている。大気汚染は、恒常的な問題、時節柄の問題など、さまざまな問題が要因となっている。

デリーは世界の大気汚染ランキングでも常にワーストに入る都市の一つだが、今回の措置はそれがさらに悪化している状態を表している。デリー政府は、「大気汚染が耐えられない水準まで達した」として、市民、学校、交通機関などに対して規制や警告を発令することになった。


まず10日間、ナンバーの末尾番号で自動車の通行制限。学校は数日の臨時休校とし、公共施設やビルの建設工事も中止された。市民にも「(特に空気が悪くなる)朝や夜間は屋外での運動を避けるように」と呼びかけた。また特に汚染がひどい地区に立ち入らないこと、扉や窓を閉め切って屋内で過ごすよう等と細かい指示を出して市民に警戒するように呼びかけた。


大気中のPM2.5のレベルは急上昇し、呼吸器疾患を引き起こす恐れのある「有害」レベルに達しているという。大気汚染の原因は何なのか。


インドでは、一年のこの季節に焼き畑やわら焼きが行われる。広大な農地が一度に焼かれることで夥しい量の煙が立ち上り、雲となって都市を覆う。また同じ時期に行われるヒンドゥー教の祭”ディワリ”で人々が打ち上げる花火の煙にも大量の有害物質が含まれており、状況をさらに悪化させる原因となっている。常態化している車の排ガスや、工事や工場で発生する有毒ガスの上に、さらにこれらの時節的な現象が加わり、空気汚染が非常に危険な状態に陥っている。関係者によれば今回の大気汚染は「災害レベル」だという。インドの大気汚染問題は年々危険性を増している。

多くの住民の健康と命を脅かす大気汚染問題の対応策が早急に求められている。

[フィリピン] 都市の発展と人々の経済活動を阻む深刻な交通渋滞

2019年9月発表のアジア開発銀行(ADB)による報告書では、アジア諸国における人口500万人以上の278都市のうち、フィリピンのマニラが最も交通渋滞の深刻な都市に選ばれた。

都市への急激な人口流入に伴い、年々増加する通勤・通学者の数。これに対し、彼らの移動を支えられるような効率的で経済的な公共交通機関の整備が追い付いていないためである。

例えば同都市の幹線道路であるEDSA通りには47のバスターミナル、17の商業施設、そして多くの企業オフィスや教育機関が集まっており、1日当たり40万以上の車両がその道路に集中することから、毎日のように朝から晩まで深刻な交通渋滞が発生している。

BBCも、この交通渋滞に対するフィリピン政府の対応の悪さを示す記事を掲載。“フィリピン大統領の広報官は「早くその場所に着きたいのなら早く出発すればよい」という無神経な発言をし「現実を全く理解していない」と国民から非難を受けている。都市部の住民の一人はBBCの取材に対し「子供達も、片道3時間という長時間の通学を強いられている」と状況の深刻さを訴えている。さらに追い打ちをかける如く、最近になって主要な鉄道の3路線が故障する事態となり、道路渋滞を更に悪化させるトラブルにも見舞われた”などと報道している。

交通インフラ整備の遅れは、大人のみならず都市部に通学する子供達にも精神的、身体的な苦痛を強いており、ひいては国や社会の健全な発展を脅かしている。

ちなみに今回のADBの調査は、人口500万人以上のアジアの278都市を対象にGoogle Mapを用いて交通所要時間を算出しているが、マニラに続き2位以下の都市は、以下の通りとなっている。

2位クアラルンプール(マレーシア)/3位ヤンゴン(ミャンマー)/4位ダッカ(バングラデシュ)/5位バンガロール(インド)/6位ハノイ(ベトナム)/7位コルカタ(インド)/8位デリー(インド)/9位プネ(インド)/10位ホーチミン(ベトナム)

人々に時間、経済、体力的な負担を強いる過酷な都市の道路渋滞を解消するため、ひいては都市の健全な発展のためにも、道路事情の改善と質の高い交通インフラの整備につながるための解決策が早急に必要とされている。