[ネパール] 災害復興途上国におけるCOVID-19対応の難しさ

新型コロナウィルスによるパンデミック現象は、自然災害から復興途上にある脆弱な国や地域を直撃している。

4月25日は、約9000人もの死者を出したネパール大地震から5年の日。その後、国内の至る所に残された震災の爪痕はまだ生々しく、復興は、いまだ道半ばである。

特に病院や医院といった、そもそも地域住民の命と健康を守るための重要な公共施設であり、このパンデミックにおいて、同国の感染防止対策の重要拠点となるべき公共医療施設が、なんと震災前の半分程度しか復旧していないという。

特に地方は、公共施設のみならず、被災家屋の復旧さえ進んでいない所も多い。3月末から感染防止対策により、同国民に対しての外出禁止措置が続いているが、自らの住宅に居住することができない住民も多く、そういった住民は、仕方なく、他人の間借りするなどして、何とか日常生活を凌いでいる。

政府の復興当局者も「貧困層等の少なくとも1万5000世帯が住宅を再建できていない」と認めている。

復興が進まない背景には、政府が世界各国の支援金を配分できていない問題があるといわれている。

震災から2年半ほどの間は国内では引き続き政争が繰り返されており、現在までに投入されたのは、被害額約7060億ルピー(約6200億円)の半分程度にとどまっているのだ。

COVID-19の問題は、世界の貧困層および大規模自然災害などによって生活基盤を失った人々に、より重い負担となり、のしかかっている。

[インドネシア] 都市封鎖で更に脆弱化するインフォーマルセクター労働者

世界を席巻する新型コロナウィルス感染拡大問題。アジアの途上国でも、都市封鎖などの措置が取られ、感染拡大を最小限に抑えるための対策を講じている。中でもインドネシアは4月17日時点で感染者5923人、死者は520人となり、死者数では以前から域内最大だったが感染者数でもフィリピンを抜き、ASEAN加盟10カ国で最も多い国となってしまった。

同国財務相は「新型コロナウイルスの影響でこれまでに約120万人が失業する事態となり、今後失業者が520万人に上る可能性がある」として、失業者、困窮者への救済策を強化する姿勢を明らかにしている。

ただ、一方、こうした経済政策の恩恵を「受けにくい」業種がある。それは、インドネシアを含む東南アジア諸国の就労者の多くが携わるいわゆる「インフォーマルセクター」である。

「インフォーマルセクター」とは、開発途上国に多く見られる就業形態を指し、例えば、露店、行商、白タク、日雇い労働者など、公式に記録されない職種のことを云う。そうした部門の経済活動は管理規制ができず、その国の経済活動の実態把握を難しくしているともいわれている。

そんなインフォーマルセクターの経済活動は、逆に言えば都市における「フォーマル」な経済活動が順調であることを前提に成立している。そして、都市封鎖によってフォーマルな経済活動が絶たれた今、そうした膨大なインフォーマルセクターの労働者等は休業手当などのセーフティネットがあるわけでもない。また、当然ながらテレワークができるような仕事でもないのだ。

また、こうした労働者は、別の収入源を見つける必要があり、自宅にじっとしているわけにはいかない。つまり、何とか別の方法で日々の生活費を稼ぐまたは食料を入手する必要があり、そのため外出制限を守ることができないのだ。これはつまり、その人がウィルス感染するリスクを意味し、その地域社会、そして国全体にとっての更なるリスクを意味するのだ。

上記の財務省の発表では失業者は520万人に上るということだったが、実際、このインフォーマルセクターを合わせた同国の完全失業者は最大で約1600万人に上るという試算もある。

社会から隔絶され、セーフティネットの恩恵を受けられないインフォーマルセクター労働者の生活を守るための、また、そのような彼らの生活が保障され、安心して社会的距離を取り感染拡大のリスクを最小限に抑えられるような施策が、今、求められている。

[ルワンダ] 落雷時の感電リスクを高める家屋構造

アフリカのルワンダは世界で最も雷の発生件数が多い地域のひとつであり、落雷により年間100名近くが死傷し、PCや通信機器の故障等も頻発している。

水汲み時など屋外だけでなく、屋内でも落雷により電流が流れ込み被害にあう、収入源である家畜を落雷により失うなど、雷はルワンダの人々の生活にとって大きな脅威となっており、しかも雷害対策は不十分で、人々の雷に対する正しい知識も不足している状況であった。

大阪にある音羽電機工業社はインターンシップに来たルワンダ人留学生から、そうした現地の雷被害の甚大さを知り、雷害対策を改善したいとの思いから何度も現地を訪問。ルワンダ災害対策・難民問題省等と協力し、人々に雷害対策技術や機器の正しい設置方法等を伝えるとともに自社の海外ビジネス展開の足掛かりとするための現地調査を行った。

調査結果により、落雷被害を大きくする主な要因の一つは、家屋構造にあることが判明。床も壁も土で作られた伝統的な現地家屋は、被雷した際の通電がしやすく屋内にいても被害を受ける可能性があるのだ。

このルワンダの例のように、日本企業が、その知識と技術を結集して途上国の課題解決の仕組みづくりを実行する事例が少しずつ増え始めている。このケースも当該地域の伝統的な建築工法や、そこに住む人々の生活習慣を丁寧に調査、分析し、ソリューションを開発した好例と云えよう。

途上国の課題には、日本とは全く事情が異なる、知られざる問題や背景が存在する。それを丁寧に調査し分析し、現地の人々にとっての本当の課題を見極めてそこを「リバレッジ」する仕組み作りを目指すことが肝要なのである。