[インド] 三輪タクシー「リキシャ」運転手の貧困と健康被害

インドには600万台の三輪車タクシー「リキシャ」があり、1,200万人のドライバーがいるが、中には1日で400円程しか稼げず、家計を支えられずホームレスになってしまう人もいる。しかし、多くの運転手はリキシャをレンタルしており、レンタル代を支払う為に手取りが少なくなるが、リキシャをレンタルできないと収入を得られないという悪循環に陥っている。

また、世界保健機関(WHO)が発表した世界で最も大気汚染が深刻な14の都市は全てインドにあり、リキシャの運転手は常にマスクを着用しながら働いていても健康に悪影響を及ぼしている。特に、リキシャには圧縮天然ガス(CNG: Compressed Natural Gas)で動く種類と、運転手が自らペダルを漕ぐ種類がありるが、ペダル型の運転手は肺活量が多くなり、PM2.5が肺や血液に入り込み、特に健康被害が深刻になっている。

BBCが行ったインタビューに対し一人のリキシャ運転手はこう答えている。

「私は1日で約300ルピー稼いでいますが、その一部を自身の食料に使い残りは妻と二人の子供の為に貯金しています。家計は私が支えないといけないので、例え息をするのが苦しくても働き続けなればいけません」

以下原文:

“I earn around 300 rupees ($4 ;£3) a day and spend some of that on buying food and save the rest for my wife and two children. My family depends on me, so I have to keep working – even if I am struggling to breathe” 

[サハラ以南アフリカ] 男子の8割台にとどまる女子の中等教育就学率

世界において、初等教育の就学率は男子が91%、女子が89%と、男女格差は減ってきている。しかし中等教育(中学・高校)においては、男女格差が依然として存在しており、とくにサハラ以南アフリカでは、男子を100とすると女子の就学率はまだ87%にとどまっている。

女子の中等教育への就学を阻んでいるのは、例えば「女性は教育を受けるべきではない」「家事をするのに教育は必要ない」「女の子は早く結婚して家を守るべきだ」といった女子に対する伝統や宗教による差別、偏見などの要因がある。

親が経済的に余裕がなく、なおかつ多くの子供がいる場合、まずは男の子を優先的に学校へ通わせようとする文化傾向もある。

また、教育施設の問題として、例えば「そもそも学校に女子トイレがない」ことや、「学校までが道のりが遠く、女子生徒を通わせるのが危険」などの問題も挙げられている。

[バングラデシュ] 難民の基本的生活を支える安全な住まいの不足

バングラデシュ南東部の県コックスバザールには、自国を追われ、バングラデシュへ逃れてきたミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ難民が避難生活を送っており、その数はおよそ100万人を超えるとされる。

現在、コサックバザールは世界最大の難民キャンプともいわれているが、この巨大な難民キャンプは過密状態であり、難民の多くは地盤の緩い斜面に建てられた防水シートと竹でできた掘っ立て小屋などでの生活を強いられている。

コサックバザールは、モンスーンの季節には降水量が非常に高く、年はサイクロンによる洪水や土砂災害が引き起こされ壊滅的な被害を経験している。加えて、そのような環境下では、難民キャンプへのアクセスも度々遮断され、支援物資を難民のもとへ届けることが非常に困難となる。そのため、コサックバザールで暮らす難民は、ミャンマー国内での迫害から逃れて難民キャンプに辿り着いたとしても、避難先での暮らしは非常に脆弱なものであり、人々は、住居の崩落や水害、また付随的に発生する食糧不足などへの恐怖や不安と隣り合わせの日々を送っていることが報告されている。

[パキスタン] 汚染された生活水による感染や病気のリスク

パキスタンに暮らす世帯の3分の2は細菌に汚染された水を飲料水として利用している。首都のイスラマバードにはいくつかの水路が流れているが、どこもゴミであふれ汚染されているため、近所の小川を飲料水として利用するしかない。

また、第二の都市ラホールでは、この地域を流れるラビ川に、上流の数百もの工場の排水が垂れ流されている。しかし地元住民はラビ川の水を飲料水として使用しており、この川の魚を食べ、この川の水を灌漑用水として農地に引いている。その結果、ラビ川の魚の骨に重金属汚染が確認されたり、農作物の栽培には大量の農薬が使用されている。

国連によると、こうした劣悪な水質により、パキスタンに暮らす人々の間で腸チフスやコレラ、赤痢、肝炎などが蔓延しており、同国における疾病や死亡の30~40%を占める要因となっている。 パキスタンの水は汚染の問題だけでなく、水資源の枯渇の危機にも面している。

近年、人口が急増したパキスタンでは、このまま非持続可能な水利用が進めば、2025年までに水源が枯渇し、「絶対的水不足」の状態となる恐れがあると指摘されている。国内には大規模な貯水池が3か所しか存在せず、地下水の汲み上げが進行しているが、その汲み上げの地下水面はヒ素濃度が高い深さにまで迫っており、ヒ素に汚染された水を人々が利用するようになってしまう恐れがある。

[インド] 交通事故を誘発する劣悪な道路状態

インドでは、国の急成長に合わせ道路のインフラ整備も急ピッチで進められているが、その道路の舗装の質は悪く、至るところに陥没や崩落による「穴」があき、これらが原因とされる交通事故が多発している。2017年、陥没やくぼみが原因と思われる交通事故だけで、年間3,597人が命を落とし、また約25,000人が負傷している。

そうした危険な「穴」が生じる原因の一つに、インドの道路工事の技術の低さが考えられている。現在のインドではとにかく「質」より「数」を優先した道路網の整備が進められているが、知見や技術が少ないまま短期間でより多くの工事を進めようとすることで、ひとたび大雨が降ると、簡単にひび割れや穴が生じるような、耐久性に欠く質の悪い道路が作られてしまっている。

最近では女性がスクーターに乗って道路を走行中、乗っていたスクーターの車輪が道路の陥没した部分にはまり、そのままバランスを失い転倒。投げ出された女性は隣の車線を走っていたバスに轢かれて死亡する、という痛ましい事故が起きた。

また、穴そのものが原因ではなく、穴を避けようとする人間心理によっても、交通事故は起こる。ほとんどの車やバイクが転倒を避けるため、そうした陥没個所や穴を見つけると、それを避けるため急な車線変更をする。そのことが原因での衝突事故もまた、多く発生しているのだ。

[オーストラリア] プラスチックゴミによる海洋汚染

オーストラリアでは毎年300万トンのプラスチック(レジ袋、ストロー等)が製造され、その内13万トンが最終的に海に流れ着いている。実際、2016年から2017年にかけてオーストラリアの海岸沿いに流れ着いたゴミの75%はプラスチックとなっている。 流れ着くゴミ以外でも、オーストラリアでは1日で100万のレジ袋が使用されており、プラスチックゴミ削減を目指すオーストラリア政府は2018年7月よりレジ袋の使用を禁止したが、既に海に捨てられているゴミを回収する必要もある。実際、頻繁にボランティアによるゴミ拾いが行われており、2016年には260万個のプラスチックゴミが拾われたが、より効率的にプラスチックゴミを削減する対策が求められている。

[インドネシア] パーム油及びその代替品の生産による環境破壊

パーム油は化粧品、石鹸、食品等の様々な日用品の原材料であり、近年ではバイオ燃料としても利用されている、世界で最も生産されている植物油となっている。しかし、その生産には膨大な土地を必要とし、農地の確保のために多くの熱帯林が伐採され、焼き払われている。

一方、パーム油の代替品として考えられている菜種、大豆、ヒマワリ等の生産にはパーム油の最大9倍の土地を必要とし、熱帯雨林やサバンナの生物多様性が更に脅かされることになる危険性があると、国際自然保護連合(IUCN)は警告している。

パーム油に対する需要を満たしつつ、環境破壊を食い止められるような新たな解決策が求められている。

2018.11.6 SHIPニュースレター [Vol.10] 脚光を浴びるブロックチェーン&SDGsの可能性

秋が深まり、紅葉が楽しみな季節となりました。Vol.9をお届けしてから時間
が経ちましたが、装いを新たにSHIPニュースレター [Vol.10] お届けします。
SDGsビジネスプログラム【導入編】の11-12月の開催日も決定しました。
まだご参加されたことがない方は、ぜひ奮ってご参加下さい。
 
■ CONTENTS ■ ===========================================
【SDGs X ビジネス最新情報】脚光を浴びるブロックチェーンとSDGsの関
【SHIPプログラムご案内】
  11/14(水)& 12/7(金)開催!SDGsビジネスプログラム【導入編】
【From UNDP】民間企業と連携した「アジアの都市の課題解決」が始動!
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【SDGs X ビジネス最新情報】脚光を浴びるブロックチェーンとSDGsの関係
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例年通り9月にNYで国連総会が開催され、SHIP事務局も会議やサイドイベント
に参加してきました。そのなかで、今年、SDGsの達成に向けて新たに注目を
集めていたテーマが「ブロックチェーン」です。
 
「ブロックチェーン」。元々は仮想通貨取引に関する技術で、従来の「取引情
報を集約的に管理する仕組み」とは異なる「個々の取引情報を分散型で管理す
る仕組み」です。その成り立ちから、「仮想通貨取引だけの技術」と思われが
ちでしたが、その応用範囲は広く、今、SDGsの達成に活用する動きが盛んに
なってきています。
 
例えば、WFP国連世界食糧計画では、生体認証情報(虹彩認証等)とブロック
チェーン技術を掛け合わせることによって、レジで難民の本人確認が瞬時にで
き、一般市民と同じように商品購入ができるという画期的な仕組みを構築。難
民への食糧支援を効率的かつ確実に行うことに成功しています。
>>  “Building Blocks” World Food Programme
 
また、先進国で大きな課題となっている「食品ロス」の課題については、ウォ
ルマートがIBMと連携し、中国からの輸入食肉に関する輸送管理にブロックチ
ェーンを活用することで、これまで流通過程で発生していた無駄や余剰食品を
最小限に抑える試みを始めたことが話題になっています。
>> “Walmart and IBM Are Partnering to Put Chinese Pork on a Blockchain
     Fortune Online
 
現在進む、第四次産業革命の象徴的な技術のひとつである「ブロックチェー
ン」。この技術とSDGsの組み合わせには、新しいビジネスの重要なヒント
が隠れているかもしれません。
 
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【SHIPプログラムご案内】
    11/14(水)& 12/7(金)開催!SDGsビジネスプログラム【導入編】
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SDGsが掲げる17のゴールについて俯瞰的に理解し、様々な業界の参加者と
議論や意見交換をしながら、SDGsとビジネスの接点を探る「SDGsビジネス
プログラム【導入編】」。夕方からの2時間で、SDGsとビジネスの関係を理
解し、ネットワークが拡がると毎回好評を得ています。まだご参加頂いてい
ない方は、ぜひご検討下さい。
 
[日時] 11月14日(水)19:00-21:00(+ネットワーキング30分間程度)
   12月 7日(金)19:00-21:00(+ネットワーキング30分間程度)
   ※各回、同じ内容です
 
[会場] 以下のいずれか(1週間前にお申込み者にご連絡します)
 Japan Innovation Network(千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテルタワー)
 31VENTURES Clip ニホンバシ(中央区日本橋本町3-3-3 Clipニホンバシビル)
 
[アジェンダ]
 インプットセッション(40分間)
 ・SDGsの17ゴールとターゲット
 ・SDGs達成に向けたUNDPの民間連携策
 ・イノベーションとは?イノベーションを興すプロセス
 ・SDGsはなぜイノベーションの機会か?
 ワークショップ(80分間)
 ・SDGsを俯瞰的に捉え、ビジネスとの接点を探る
 ネットワーキング(30分間)※飲み物と軽食を囲んで
 
[参加費] 4,000円+税
 
[申込方法] 
 次のサイトより参加費をお支払い(クレジットカード、もしくは、コンビ
 ニ払い)の上、お申込み下さい  。  >> http://ship.peatix.com 
 
 ※現金でのお支払いを希望される場合は、「プログラム名、開催日、
  会社・組織名、ご所属・肩書、お名前、電話番号」を記載の上、
  SHIP事務局( ship@ji-network.org )に参加をお申込み下さい。
 
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【From UNDP】民間企業と連携した「アジアの都市の課題解決」が始動!
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UNDPでは、アジア太平洋地域の地方自治体が抱える問題と民間企業が持つソ
リューションをマッチングすることで都市問題の解決を図る「Matching
Platform for Cities and Private Sector」を始動しました。人口増を受けた交通
問題や安全な水の不足、地震・津波多発地帯における防災教育の遅れ等、この
地域の都市問題は、年々深刻さを増しており、民間企業のノウハウを取り入れ
ながら、緊急に解決を図ることが求められています。
 
この取組みに関連し、UNDPは、今年7月に日本貿易振興機構(ジェトロ)と
協力覚書を交わしました。また、この取組みの一環として、シンガポール政府
が主導する「ASEAN Smart Cities Network (ASCN)」に加盟する26都市に対
し、都市計画マスタープランの策定支援等を行っています。
 
例えばインドネシアのアチェ市では、スマトラ沖地震での教訓を活かし、防
災教育に関する取組みが進行しています。またパキスタンのイスラマバード
市では、飲料水不足に対する取組みが進められています。
 
UNDPでは、このプラットフォームに参画し、ビジネスを通じてアジア太平
洋地域の地方自治体が抱える都市問題を一緒に解決して下さる日本企業を募
集しています。ご関心をお持ちの企業は、下記担当者にお問合せ下さい。
 
 担当:UNDPアジア太平洋地域オフィス 岡橋
    asami.okahashi@undp.org

[ベネズエラ] 貧困による育児放棄や孤児の急増

ベネズエラは以前は石油大国として知られていたが、2014年の石油価格暴落に伴い、今まで石油に頼りきっていた経済が崩壊。2018年1月時点でインフレ率が1万%となっている。そのような経済状況において、日用品や食料品の価格は高騰し、基本的な生活すら立ちいかない住民が急増しており、国外に移住する人が230万人にものぼっている。そんな中、移民という手段が取れず国内で生活を続けざるを得ない貧困層の人々は、自らの子供を養うことすらできなくなり、育児放棄や養子に出す親が続出。また、他の子の食料を優先するため、「口減らし」的に年長の子供が自ら家を去らざるを得なくなり、その結果スラム街で暮らすようになるという負の連鎖が起こっている。

[ギリシャ] 森林火災時の避難を困難にする違法建築

2018年7月、ギリシャ・アテネ近郊で起きた森林火災は史上まれにみる大惨事となった。火災の中心地となったリゾート地マティでは焼失家屋2万5000棟以上。また人命被害では死亡者80名以上、行方不明者100名以上と言われている。

現地の報道によると、被害拡大の背景に指摘されるのは都市計画上の問題。森林に隣接する形で多くの家屋が建築され、道も狭いため、消防車などの接近を難しくした。また、こうした有事の際に正式な避難指示が出されず、政府の災害時の対応計画はあっても、自治体を含む連携が不十分だった可能性もある。

同国の国防相は被災地に違法建築が多かったことは被害拡大の一因だとし「法を守らない危険を理解するとき」との見解を示している。