[インドネシア] 新型コロナウィルスによって遅延する煙害対策と地域住民の健康リスクの増加

2020年4月現在、世界中の多くの国と同様、インドネシアもまた新型コロナウイルス感染による問題に直面していますが、対応の遅さや検査率の低さなど、政府は批判の対象となっています。首都ジャカルタの当局によると、新型コロナウィルス感染者は、今後2ヵ月程度で10万人以上に達すると予測しています。

しかし、環境保護団体などの主張によれば、COVID-19感染拡大の抑制を優先するあまり、インドネシアの農村部において深刻な環境課題となっている森林(泥炭)火災による煙害問題が更に悪化する懸念が叫ばれています。街のロックダウンが施行され、その監視のために多くの人手が必要となり、普段行っている、森林火災予防対策として行っている違法な土地開拓等の取り締まりができなくなる可能性が高いのです。また、同国の予算配分にも影響を与えており、地元メディアは同国環境省が2020年の予算を当初の予定の17%にあたる約1億100万ドルを削減したと報じています。

インドネシアの農業従事者等は、広大な森林地や泥炭地に火を放ついわゆる焼畑方式で開拓をし、パーム椰子やその他の作物の農業を営んでいます。この行為が、毎年膨大な煙霧を発生させて、周辺地域の大気を危険なレベルにまで汚染しています。昨年(2019年)に同国の非常に広範な地域で起こった森林火災は、2015年に起こった当時史上最悪と言われた煙害被害をはるかに凌ぐ酷さとなり、隣国マレーシアを巻き込み、外交問題にすら発展するほどの事件となりました。

世界銀行の報告によれば、昨年(2019)のケースでは推定16,000平方キロメートルの広さの土壌が火災となり、それによる同国の経済損失は52億ドル以上に上ると試算されました。また、当然国民の健康にも甚大な影響を及ぼしており、90万人以上の人々が、当時の煙害により呼吸器疾患を発症しています。そうした、煙害による呼吸器系疾病患者が増加している地域にとって、呼吸機能に致命的なダメージを与えるコロナウイルスの蔓延は、そうした人々を更なる命の危機にさらすことにもなるのです。

地球環境に甚大な影響を及ぼす煙害の問題を緩和し、また同時に、コロナウィルスの猛威から人々を守るための対策が喫緊で求められている。

[ネパール] 災害復興途上国におけるCOVID-19対応の難しさ

新型コロナウィルスによるパンデミック現象は、自然災害から復興途上にある脆弱な国や地域を直撃している。

4月25日は、約9000人もの死者を出したネパール大地震から5年の日。その後、国内の至る所に残された震災の爪痕はまだ生々しく、復興は、いまだ道半ばである。

特に病院や医院といった、そもそも地域住民の命と健康を守るための重要な公共施設であり、このパンデミックにおいて、同国の感染防止対策の重要拠点となるべき公共医療施設が、なんと震災前の半分程度しか復旧していないという。

特に地方は、公共施設のみならず、被災家屋の復旧さえ進んでいない所も多い。3月末から感染防止対策により、同国民に対しての外出禁止措置が続いているが、自らの住宅に居住することができない住民も多く、そういった住民は、仕方なく、他人の間借りするなどして、何とか日常生活を凌いでいる。

政府の復興当局者も「貧困層等の少なくとも1万5000世帯が住宅を再建できていない」と認めている。

復興が進まない背景には、政府が世界各国の支援金を配分できていない問題があるといわれている。

震災から2年半ほどの間は国内では引き続き政争が繰り返されており、現在までに投入されたのは、被害額約7060億ルピー(約6200億円)の半分程度にとどまっているのだ。

COVID-19の問題は、世界の貧困層および大規模自然災害などによって生活基盤を失った人々に、より重い負担となり、のしかかっている。

[インドネシア] 都市封鎖で更に脆弱化するインフォーマルセクター労働者

世界を席巻する新型コロナウィルス感染拡大問題。アジアの途上国でも、都市封鎖などの措置が取られ、感染拡大を最小限に抑えるための対策を講じている。中でもインドネシアは4月17日時点で感染者5923人、死者は520人となり、死者数では以前から域内最大だったが感染者数でもフィリピンを抜き、ASEAN加盟10カ国で最も多い国となってしまった。

同国財務相は「新型コロナウイルスの影響でこれまでに約120万人が失業する事態となり、今後失業者が520万人に上る可能性がある」として、失業者、困窮者への救済策を強化する姿勢を明らかにしている。

ただ、一方、こうした経済政策の恩恵を「受けにくい」業種がある。それは、インドネシアを含む東南アジア諸国の就労者の多くが携わるいわゆる「インフォーマルセクター」である。

「インフォーマルセクター」とは、開発途上国に多く見られる就業形態を指し、例えば、露店、行商、白タク、日雇い労働者など、公式に記録されない職種のことを云う。そうした部門の経済活動は管理規制ができず、その国の経済活動の実態把握を難しくしているともいわれている。

そんなインフォーマルセクターの経済活動は、逆に言えば都市における「フォーマル」な経済活動が順調であることを前提に成立している。そして、都市封鎖によってフォーマルな経済活動が絶たれた今、そうした膨大なインフォーマルセクターの労働者等は休業手当などのセーフティネットがあるわけでもない。また、当然ながらテレワークができるような仕事でもないのだ。

また、こうした労働者は、別の収入源を見つける必要があり、自宅にじっとしているわけにはいかない。つまり、何とか別の方法で日々の生活費を稼ぐまたは食料を入手する必要があり、そのため外出制限を守ることができないのだ。これはつまり、その人がウィルス感染するリスクを意味し、その地域社会、そして国全体にとっての更なるリスクを意味するのだ。

上記の財務省の発表では失業者は520万人に上るということだったが、実際、このインフォーマルセクターを合わせた同国の完全失業者は最大で約1600万人に上るという試算もある。

社会から隔絶され、セーフティネットの恩恵を受けられないインフォーマルセクター労働者の生活を守るための、また、そのような彼らの生活が保障され、安心して社会的距離を取り感染拡大のリスクを最小限に抑えられるような施策が、今、求められている。

[ルワンダ] 落雷時の感電リスクを高める家屋構造

アフリカのルワンダは世界で最も雷の発生件数が多い地域のひとつであり、落雷により年間100名近くが死傷し、PCや通信機器の故障等も頻発している。

水汲み時など屋外だけでなく、屋内でも落雷により電流が流れ込み被害にあう、収入源である家畜を落雷により失うなど、雷はルワンダの人々の生活にとって大きな脅威となっており、しかも雷害対策は不十分で、人々の雷に対する正しい知識も不足している状況であった。

大阪にある音羽電機工業社はインターンシップに来たルワンダ人留学生から、そうした現地の雷被害の甚大さを知り、雷害対策を改善したいとの思いから何度も現地を訪問。ルワンダ災害対策・難民問題省等と協力し、人々に雷害対策技術や機器の正しい設置方法等を伝えるとともに自社の海外ビジネス展開の足掛かりとするための現地調査を行った。

調査結果により、落雷被害を大きくする主な要因の一つは、家屋構造にあることが判明。床も壁も土で作られた伝統的な現地家屋は、被雷した際の通電がしやすく屋内にいても被害を受ける可能性があるのだ。

このルワンダの例のように、日本企業が、その知識と技術を結集して途上国の課題解決の仕組みづくりを実行する事例が少しずつ増え始めている。このケースも当該地域の伝統的な建築工法や、そこに住む人々の生活習慣を丁寧に調査、分析し、ソリューションを開発した好例と云えよう。

途上国の課題には、日本とは全く事情が異なる、知られざる問題や背景が存在する。それを丁寧に調査し分析し、現地の人々にとっての本当の課題を見極めてそこを「リバレッジ」する仕組み作りを目指すことが肝要なのである。

[ブラジル] アマゾン熱帯林のCO2吸収力低下がもたらす更なるエコシステム崩壊

研究チームの発表によれば、過去30年間の調査結果から世界の熱帯林が吸収する二酸化炭素の量は予想以上の速いスピードで減少していることが判明したという。90年代と比較すると3分の1程度その「能力」が落ちている、というのだ。また、その「CO2吸収力」の低下は、酸素の産出量の低下を表すだけではなく、森林そのものが二酸化炭素ガスの「源」と化す可能性すら示しているという。

研究者チームの一人リーズ大学サイモン・ルイス教授は「典型的な熱帯林は2060年代までに炭素源になる可能性がある」という。「我々が気候変動問題に関して最も憂慮すべき問題の一つが、既に始まっていることが判明した。これはこれまで言われいた悲観的な見解よりも、更に数十年早いペースであることを示している」

今年11月に英国グラスゴーで開催されるCOP26(国連気候変動会議)では、21世紀の半ばまでに世界の国々が「ゼロ・エミッション」に到達することを期待されているが、企業や国の施策の多くは、森林保護、植林、造林等、いわゆる「オフセット」活動によるものが多い。


同教授は「実際は(小規模な地域に対する”植林”等のレベルではなく)全世界と全事業者が、完全な”ゼロエミッション”を目指す必要がある。どんな些細な炭素ガスすらも地球上の大気から排除するくらいのレベルの施策が必要とされる」と言う。

地球の二酸化炭素を吸収し我々に酸素を与えてくれていた地球上の緑は、現状のような気候変動の課題や無秩序な伐採という人的脅威にさらされている限り、その本来の「機能」を更に低下させ、むしろ気候変動を加速させる存在になる―これまで地球が営み、生命を育んできたエコシステムが、崩壊の危機にあるのである。

この急速に進む深刻な地球規模の課題に対し、抜本的な解決につながるためのソリューションが、喫緊に求められている。

[インドネシア] 都市の地盤沈下進行と更に悪化する洪水被害

インドネシア首都ジャカルタとその周辺で2019年大晦日に発生した大洪水。1月8日のTIME紙報道によれば、死者66人にまで達する大災害となっている。

https://time.com/5761097/jakarta-indonesia-floods/

”ASEAN人道支援センター(AHA)発表によると「ジャカルタと西ジャワとバンテンの3州では地滑りと鉄砲水により、36,000人以上が避難。2013年、29人の犠牲者が出た当時「史上最悪」といわれた大洪水を、更に上回る規模の被害となっている。専門家は、急速に進む都市ジャカルタの地盤沈下が、気候変動による洪水被害を更に拍車をかけているという。また、洪水被害によって、これらの国々が抱える貧富の差を更に拡大させる恐れもあるという。

また地元のメディアあるTempo.Coによると、この異常な降雨により地盤が緩んだことによって発生した地滑りと鉄砲水が、バンテンのLebak地区の住民約17,200人の生活に大きな影響を与えている。警察発表の情報では、16のモスクが洪水によって損壊とされている。”

この気候変動によるとみられる水害の頻発に対して、更に被害を大きくしているのがジャカルタの深刻な地盤沈下である。TIME紙の同記事によればー

”世界銀行によると、北ジャカルタの一部の地域は年間で6〜10インチ(20-30センチ)も地盤沈下しており、2025年までには、最大海面下16フィートにまで下がる危険性があるという。”

 近年、急速に発展し、急激な人口増加となっているジャカルタ。その都市が水没する原因は主に2つの要素があるといわれている。一つは、市民による地下水の違法汲み上げの結果により引き起こされた地層内の空洞化。そして、もう一つは、地球温暖化による海面上昇である。

ジャカルタは漁港都市として海抜の低い湿地帯上につくられ、発展した街であり、地盤も弱い。その上、上下水道のインフラ整備が急激な人口増加に追い付かず、水道インフラの整備がなされていない。生活水の急激な需要増に都市インフラが追い付いていないため、住民による地下水の違法取水が横行しているのだ。そうした生活基盤の整備の遅れが、地下の空洞化を進行させている直接の原因と言われている。

多くの支援組織や援助国からの指摘を受け、インドネシア政府は、ジャカルタ市内の水道インフラの整備や、洪水対策のための巨大な防潮堤の建設を進めているが、今年1月に起こった被害は、首都ジャカルタの都市としての機能崩壊が相当なレベルで進んでいることを表している。

都市の水道インフラの不整備や、気候変動による災害の影響を最小限に食い止めるための施策が喫緊で求められている。

 

[途上国] 経済発展で顕著になる都市の廃棄物処理システム不在による課題

The World bank (世界銀行)が2019年9月に発表した情報によると、世界中、特に経済成長目覚ましい途上国において、廃棄物の発生率が上がっているという。

発表によると「 2016年時点では世界の大都市で約20億1,000万tの固体廃棄物が発生。つまり都市の人口一人当たり一日0.74kgという量のゴミが出たという計算である。急速な人口増加と都市化がすすむことで、このままいけば2050年にはゴミの年間廃棄量は34億4,000t、つまり2016年の70%増というレベルにまで達することが予測されている」とある。

また、「先進国の国民と比べて、途上国の特に都市部の貧困層が、ずさんな方法で管理、処理されている廃棄物によって、深刻な影響を受けているのである」としている。

低所得国では、廃棄物の90%以上が規制のないゴミ捨て場で処分される、または屋外で人の手によって燃やされる。こうした、人々の非公式なゴミ処理習慣が、人々の健康、安全な生活、そして環境への甚大な影響をもたらしているのだ。適切に処理されない廃棄物は、伝染病ウィルスや大腸菌などの繁殖を促し、メタンガスが発生することで環境汚染の根源ともなる。また、都市部の治安を乱すような心理的に負の影響を与えることがある。

また、世界銀行は発表の中で「廃棄物の適切なマネジメントがサステナブルな都市の構築には不可欠」と述べ、この課題に取り組むことに対するいくつかの視点を紹介している。例えば以下のような項目である。

インフラ整備:廃棄物の分別処理施設の建設、設備のリニューアル、不法投棄場の閉鎖、ごみ埋立て地の造設及び改修、輸送の仕組み強化のための投資

財政面のアドバイス:廃棄物処理の予算獲得に資する税や徴収方法の設計、コスト削減のための財政計画支援。

市民参画の仕組み作り:市民の行動変化や積極的関与が、廃棄物処理の仕組みを円滑にするカギである。市民の関与を促すための、ごみ削減、分別、リサイクル意識の啓蒙やインセンティブの仕組みづくりの支援

社会的包摂:途上国での廃棄物回収は、その15%〜20%の収集、選別、リサイクル作業をいわゆるインフォーマルな労働者層に依存している。こうした労働者等の人権保護や労働条件の向上、トレーニングの提供などを進めることにより包摂的社会構築のために取り組んでいる。

気候変動と環境整備:正しい廃棄物処理は環境の課題解決を促進する。また食品ロスの削減、有機廃棄物の再活用、バイオガス、埋立地ガスなどの有害ガスを回収し空気を清浄化する技術は、温室効果ガスの緩和を促進する。また用水路への不法廃棄を減らすことで都市のインフラを正常に機能させ、冠水や洪水などの災害から市民未を守っている。

健康と安全:廃棄物管理の仕組みを整える取り組みは、野焼きを減らし、害虫やウィルスの拡散を緩和。また治安の維持や公衆衛生にも貢献し、市民のQOLを向上させる。

今後ますます経済成長する途上国において、廃棄物処理の問題は重大かつ解決必須。そして、この難しい課題を解決することが、周辺の様々な課題を解決することにもつながる、まさしくレバレッジポイントであるといえよう。

増え続ける廃棄物を効率的かつサステナブルな方法で管理する仕組みに関するアイデアが必要とされている。

[コンゴ民主共和国] 世界最悪のはしか流行によって奪われる子ども達の命

2020 年1月のCNN報道によれば、アフリカのコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)における麻疹(はしか)の流行が近年における最悪レベルにまで拡大している。世界保健機関(WHO)も、1月9日までに同国におけるはしかによる死亡者が6000人を超えたことを明らかにしている。更にWHOの報告によれば、2019年以降、はしかの疑いのある症例は31万件も報告されており、その患者の1/4は、5歳未満の子ども達であるという。

はしかは感染力が強く、患者のせきやくしゃみなどの空気感染により広がる。また、体力の弱い子どもが感染することが多く、重症化すれば、脳炎や肺炎などの致死率の高い合併症を発症することもある。

この感染症の予防に最も有効なのはワクチン接種。しかしコンゴでは、昨年のエボラ出血熱が過去2番目に最悪なレベルで流行した際判明したように、人々の、国の医療システムへの不信感が根強い。また、一部の地域では相変わらず武装集団による抗争も勃発しており、それらが障害となり、人々の予防接種率は低いままなのだ。

国際連合児童基金(UNICEF)などの団体の発表によると、同団体は支援団体と連携して医薬品などの配布を続けているものの、こうした内情によって思うように対策が進んでいないといい、「包括的な長期計画が必要である」と強調。また、エボラ熱と比べた時、はしかの方が死者数が多いにもかかわらず、エボラ熱ほど注目が集まっていないと専門家は指摘している。

はしかの更なる拡大を抑える、または、感染後、すぐに治療を受けられるような医療システムの充実が、急務である。

[インド/アフリカ等] 衛生作業員の過酷な労働環境と認められない尊厳

2019年11月、国際労働機関(ILO)、ウォーターエイド、世界銀行、世界保健機関(WHO)が共同で発表した報告書によれば、開発途上国で数百万人いるといわれる「衛生作業員(人間の排泄物処理に従事する職人)」のほとんどが、機材も安全対策も法的な権利もないという非人間的な労働環境での労働を余儀なくされているという。調査発表をおこなった4つの団体は、非人道的な労働環境に対する注意を喚起し、その改善を強く促そうとしている。

人の排泄物処理のシステムは、トイレから始まり、排泄物が処分または再利用されるまでが一連の流れであるが、このシステムの様々な段階や過程において、衛生作業員達が働いている。彼らの仕事には、トイレ掃除、排泄物を溜めたタンクや水槽の汲み取り、下水道やマンホールの清掃、ポンプ場や処理プラントの操作などがあるが、こうした仕事に従事する彼らの多くが人の排泄物に直接触れ、機材や安全対策もない条件下で長時間作業をし、さまざまなガスやウィルス菌に暴露されるリスクと隣り合わせでこの仕事に従事している。

まず、命と健康にかかわる問題の一つに、有毒ガスがある。浄化槽や下水道に発生するアンモニア、一酸化炭素、二酸化硫黄などの有毒ガスは作業員の意識を失わせたり、時に死に至らしめる。正確な統計データはないものの、インドだけでも5日おきに約3人の衛生作業員が死ぬケースがあると推定されている。

一方、人権に関する課題も多い。こうした衛生作業員は多くの場合、階級社会がまだ残る社会においては下層とされる人々が就く職であり、社会から疎外され差別を受ける人々である。そんな彼らの仕事は、賃金相場も不確定で、法的権利や社会保障などもない。経済的な安定もなく、保障もないことが負の連鎖となり、かれらは貧困からさらに脱却できないのだ。

報告書では、衛生作業員の過酷な状況がわかる例がいくつか紹介されている。

インド、バンガロールの衛生作業員、Somappa。排泄物タンクの掃除は素手と裸足。傷のある足を感染症から守るためにビニール袋を巻き付けている。

アフリカ、ブルキナ・ファソのWendgoundiは、自分の職には何の尊厳もないと嘆く。「何か記録が残るわけでもない。何の実績や足跡も残らない。自分は何者でもなく、死んでもただ死ぬだけ。自分の子にわたしと同じ仕事はやらせたくない」

イギリスのNGO、ウォーターエイドの最高経営責任者(CEO)ティム・ウェインライト氏は、「誰かがトイレにたまった廃棄物を適切に処理しなければ、その衛生環境は悪化し、利用者の衛生リスクも高まる。つまり衛生作業員は、あらゆる社会で最も重要な役割の一つを担っているのだ。しかし彼らは健康と命を危険にさらす環境で働かざるを得ず、感謝もされないどころか、汚名と疎外感を背負わされている。これは決して容認されるべきことではない」と強調している。

WHOも11月15日のHP発表にて「2030年までに持続可能な開発目標6を達成するためには多くの衛生作業員等が、安全で、健康で、尊厳ある労働条件の下で働くべきである。社会全体の健康を守る衛生システムをきちんと維持する人々のため、安全で威厳のある労働環境を確保すべき」としている。

世界中の発展途上国の衛生作業員達の権利と福祉の向上に資するソリューションが求められている。

[インドネシア/マレーシア等] 越境により広範な地域に被害をもたらすヘイズ(煙害)

東南アジア地域、特にインドネシアが抱える環境破壊問題の一つ、ヘイズ(煙害)は、年々深刻さを増しているが、特に今年8月から発生したとみられる森林・泥炭火災は、4年前に起きた当時史上最悪といわれた大規模森林火災に匹敵するレベルだといわれている。

9月19日発表のロイター通信の記事では、今回の泥炭火災に関する懸念すべき事実情報を7つ挙げている。

1: 泥炭地を野焼きすることで地中のバイオマス成分が燃やされ、泥に含まれていた炭素が大気中に放出され煙が発生する。この有機炭素の中にPM2.5として知られる微粒子が含まれており、人体や気候変動に深刻な悪影響を与える可能性がある。

2: 泥炭は腐敗した植物の堆積したもの。この泥炭が燃えるとその泥の深さと密度のため消火が非常に困難であり、一度燃え始めると数ヶ月、長ければ数年もの間、燃え続けることがある。また泥炭は乾燥していると特に可燃性が高まる。森林開拓によって地下水を失い、干上がった状態の泥に燃え移れば、そのまま予期せぬエリアにまで火災が広がっていく。そして炎は泥炭を焼き尽くすと同時に、そこにあるこれから成長するはずの木々の根や種子までも燃やし尽くす。

3: 2015年9月に起こった、当時史上最悪とされたインドネシアのヘイズ被害。そのときの危機と比較しても、今回の方が、有機炭素による汚染がより広範囲に広がっていることが分かった。データによれば2015年のケースでは煙霧はまばらなところもあったが、今回の場合、より濃度が高い広範な煙霧が発生している。

4: インドネシア環境・林業省の調査データによると、ボルネオ島カリマンタン州の州都パランカラヤの大気汚染指数は500で「危険」レベルのまま。また、その他の地域、ジャンビ州やリアウ州などでも指数100またはそれ以上の数値となり「不健康」レベルとなっている。

5: インドネシア災害管理委員会のSNS発表によると、インドネシア政府はスマトラやボルネオ等の6つの州で非常事態宣言を発令。29,000人以上の軍、警察、関係省庁職員を動員して火災地域の大規模消火活動を進めている。

6: 隣国マレーシアとシンガポールにも悪影響を及ぼしており、二国で大気汚染指数が「不健康」レベルとされた。また、マレーシア政府は影響がみられる地域にある数千もの学校を閉鎖。この状況を打開するため非常手段として人工降雨を展開。また国民にマスクを配布。

7: インドネシア保健省の発表によると、パランカラヤでは11,758人、リアウでは15,346人、ジャンビでは15,047人もの人々に急性呼吸器感染症の症状が見られているという。

 

このインドネシアで発生した泥炭火災に関しては、WWFジャパンも「緊急報告:インドネシアで泥炭・森林火災が多発」として、問題の大きさと緊急性について発表している。その報告の中の「日本からできること」では、起こってしまった泥炭火災の消火活動に関する支援の必要性と、このような火災や煙害、森林破壊を未然に防ぐための企業の責任について、こう呼びかけている。

“海の向こうで起きている森林火災への対応には、まず消火活動への支援が急務です。しかし、この問題を解決するためには、こうした地域で生産されたパーム油や紙を輸入し、購入している日本の企業や消費者の理解と協力が欠かせません”

 

負の連鎖に歯止めをかけ、さらなる森林破壊、大気汚染を起こさないための策が、緊急で求められている。